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「告知事項あり」の賃貸物件とは?メリットや注意点も解説

賃貸豆知識

関口 静男

筆者 関口 静男

不動産キャリア12年

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常に応答できるわけではありませんが、弊社は執務しているスタッフが居る場合もございますので、まずは夜分でもご遠慮なくお電話下さい。

「告知事項あり」の賃貸物件とは?メリットや注意点も解説

賃貸物件のお部屋を探していると、物件情報の備考欄などに「告知事項あり」と記載されている場合があります。
その場合、「告知事項って何?」「普通の部屋と何が違うの?」と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、賃貸物件における「告知あり」とは何かにくわえて、メリットやデメリットについても解説していきます。

告知事項ありの賃貸物件とは

告知事項ありの賃貸物件とは

冒頭でもご紹介したように、賃貸物件のお部屋を探しているときに、物件を紹介する情報の備考欄などに告知事項ありと記載されているケースがあります。
記載されているのが目立たない箇所でもあり、とくに疑問を感じずに契約する方もいらっしゃいますが、理解しておかなければ入居後にトラブルに発展するかもしれません。

告知事項とは

不動産取引においては、宅地建物取引業法第35条により、物件に重大な欠陥や欠損がある際に売主や貸主は購入者や借り手に対し内容を告知する義務があります。
なぜなら、物件における欠点や欠損は、入居希望者にとっては、契約するか否かの重要な判断材料になるからです。
告知事項ありと示されている物件には、何らかの欠陥や欠損が存在する可能性が高くなります。

心理的瑕疵

入居するにあたって心理的な抵抗や嫌悪感が生じる恐れのあるときは、心理的瑕疵に関する告知が求められます。
たとえば、過去に死亡事故が起きた物件は、心理的な抵抗を感じる方がほとんどでしょう。
したがって、殺人事件などの亡くなった理由に関わらず、事故や自殺である場合でも、入居前に説明しておく義務があります。
病死のときは告知しなくても構いませんが、一人暮らしの方が亡くなっているのに気づかれずに時間が経過してしまい、腐敗していたケースなどは告知しなければなりません。

物理的瑕疵

土地や建物における物理的な欠陥や不具合を物理的瑕疵といいます。
たとえば、地盤沈下や土壌汚染、地中埋設物のほか、建物の雨漏りやアスベストの使用、排管の破損などが該当します。
一方で、床や壁の傷や経年による劣化など、目視により判別できるものは物理的瑕疵には含まれません。

環境的瑕疵

環境的瑕疵とは、物件の周辺などにおける欠陥を指し、近隣の嫌悪施設のほか振動、騒音、悪臭、浸水、日当たり、眺望の悪さなどがあげられます。
ここでいう嫌悪施設には、墓地や火葬場、ごみ処理施設、下水処理場、線路、高速道路、航空ルート、高圧線鉄塔、発電所、ギャンブル施設、風俗店などが該当します。
これらの施設は日常の生活に必要であっても、ほとんどの方が近くに住むことを敬遠するでしょう。

法的瑕疵

土地の利用や建物を建築するうえで、都市計画法や建築基準法、消防法、条例などによって規制や制限を受けます。
具体的には、接道距離が2mに満たない再建築不可の土地のほか、既設の建物が違法建築の物件や設置義務のある防災設備が備わっていないケースなどが法的瑕疵に該当します。

告知事項ありの賃貸物件におけるメリット

告知事項ありの賃貸物件におけるメリット

告知事項ありの賃貸物件に対して好ましいイメージを持つ方は少ないかもしれません。
ただし、騒音が気にならないなど各自の感覚によって評価は異なり、告知事項のある点が大きなメリットになるケースもあります。

家賃

告知事項ありの賃貸物件の特徴として、相場よりも家賃が安く設定されるケースが挙げられます。
告知事項があると、入居者を募集する際のハードルが上がってしまい、オーナーには何らかの対策が求められるでしょう。
したがって、家賃だけではなく、敷金や礼金などの初期費用が不要であるケースもあります。
家賃が周辺の相場と比較して3~5割ほど安い物件のときには、費用軽減のメリットが生まれます。
事故発生から相当の年月が経過しているときには嫌悪感が薄まっており、気にならないかもしれません。
夜遅くまで周辺が賑わっていても、夜間に働く方にとっては大きな問題点にならないでしょう。
告知事項の内容によって、家賃が安く設定されている物件を選択することも1つの方法です。

きれいな室内

事件や事故が起きた物件においては、ハウスクリーニングが念入りにおこなわれるでしょう。
クリーニングしてもシミやにおいが取れないときには、部分的ではなく部屋全体を見違えるようにリフォームするケースが少なくありません。
したがって、一般的な物件よりも室内がきれいな傾向があります。
備考欄に告知事項ありと記載されていても、内覧で室内の状態を確認してみると良いでしょう。

恵まれた立地条件

都心のターミナル駅から徒歩で1~2分など、利便性が良い場所に位置する賃貸物件は空き家になりにくく、入居するのは困難です。
また、高級住宅地に立地している物件などでは、常に空室待ちの状況になっていることが多く見受けられます。
さらに、恵まれた立地条件になると家賃が高くなってしまい、選択肢に入れづらくなるでしょう。
しかし、ときには告知事項ありの賃貸物件が、好条件の場所で発生する場合もあります。
低家賃で立地条件が良く、室内が新築さながらにリフォームされている賃貸物件は稀です。
告知事項があっても気にならない内容のときには、選択肢の一つとして検討してみても良いかもしれません。

告知事項ありの賃貸物件における注意点

告知事項ありの賃貸物件における注意点

告知事項ありの物件は、賃貸借契約を結ぶ際に注意が必要になる点が多くあります。
これらの注意点を理解しておかないと、トラブルに発展するかもしれません。

瑕疵に対するストレス

説明を受けた瑕疵の内容が気にならず、家賃が安く、きれいな室内に魅力を感じて「告知事項あり」の賃貸物件を契約したとします。
しかし、人の心は変化するため、何かの機会で瑕疵の内容が気になりだすかもしれません。
近くに位置する工場から夜遅くまで大きな音がすると聞かされていても、夜間の勤務であり関係ないと感じていたとします。
ところが、部署移動などによって昼間に働く生活スタイルに変わった場合は、夜間の騒音に悩まされる可能性が高いでしょう。
一度気になったり悩んだりしてしまうと、それが積もり積もって大きなストレスになってしまうでしょう。
したがって、告知事項ありの物件は、将来的な影響も考慮したうえで入居を検討する必要があります。

見学者の来訪

過去に事件や事故が起きてメディアなどで大きく取り上げられている物件などは、情報が広がっており住所が特定されやすい傾向があります。
このため、時間が経過してからでも、興味本位の見学者が来るかもしれません。
入居者に対して物珍しさを感じる見学者からの心ない声や、いたずら行為を受け、トラブルになる可能性が考えられるでしょう。

告知義務

不動産の取引には告知義務がありますが、告知事項がなくても安心できないのが注意点の1つにあげられます。
告知義務には、具体的にどこまでを告知しなければならないという法的な基準がなく、判断が分かれるケースが少なくありません。
そのため、慣習的に運用している部分が多く、告知に対する考え方なども会社によって大きく異なります。
事故や事件のあと最初の入居者には説明するとしても、2人目からは告知不要として取り扱っている会社があるのが実態です。
また、心理的瑕疵に該当する方の死に関しては、国土交通省が示している宅建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインが1つの参考になります。
ガイドラインでは、賃貸物件に対する告知事項の説明義務期間について、目安として3年と示しています。
したがって、3年以上前に起きた事件や事故に関しては告知されないケースも少なくありません。
さらに、不動産会社が告知義務を理解していても、オーナーが事件や事故を隠す可能性も考えられます。
事件や事故の発生についてインターネットを活用して調べる方法がありますが、内容や時期が全て把握できるわけではないため、注意が必要です。

まとめ

告知事項ありの賃貸物件には、心理的瑕疵のほか環境的瑕疵、物理的瑕疵、法的瑕疵を含んでいる可能性があります。
家賃が安くなるなどのメリットがある一方で、興味本位で見学者が来る可能性があるなどの、注意点もあります。
告知事項が記載されていなくても、気になるときには自ら調べるとともに、不動産会社に念入りに確認をおこないましょう。


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