IT重説とは?賃貸物件を借りる際のIT重説のやり方や注意点を解説

賃貸物件の契約について

関口 静男

筆者 関口 静男

不動産キャリア12年

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IT重説とは?賃貸物件を借りる際のIT重説のやり方や注意点を解説

インターネットは現代の生活に欠かせないものであり、技術の進歩には目覚ましいものがあります。
近年は、不動産に関する契約でもインターネットを活用することが増えてきました。
インターネット環境を活用した手続きのひとつに「IT重説」がありますが、くわしくご存じの方は少ないのではないでしょうか。
そこで今回は賃貸物件をお探しの方に向けて、IT重説の概要ややり方、注意点を解説します。

IT重説とは?

IT重説とは?

IT重説とは、オンラインでおこなう重要事項説明(重説)のことです。
賃貸借契約では2017年10月1日から、売買契約では2021年3月30日から本格運用が開始されました。

重要事項説明とは

賃貸物件の契約が初めての方など、そもそも「重要事項説明」についてご存じではない方もいるのではないでしょうか。
重要事項説明とは、賃貸借契約や売買契約の締結前に宅地建物取引士からおこなわれる、その不動産や契約に関する詳細な説明のことです。
多くの方にとって不動産に関する契約は頻繁におこなうものではないため、不動産や契約に関する知識が不十分な傾向にあります。
そのような場合に不利な契約を結ぶことのないよう、契約締結の意思決定に関わる大切な部分を説明するものが、重要事項説明です。
賃貸物件を借りる際の重要事項説明では、おもに次の内容に関する説明がおこなわれます。

●賃貸物件に関する内容:建物の名称や住所、面積、所有者、設備やインフラの状況、アスベストの使用状況など
●土地に関する内容:賃貸物件が建っているエリアの災害リスクなど
●契約に関する内容:初期費用の金額、違約金の有無と金額、契約の更新・解除の取り決めなど


上記はあくまでも一部であり、実際の説明内容は多岐にわたります。
重要事項説明の内容に同意できたら、賃貸借契約の締結に進む流れです。
重要事項説明は法律で義務付けられているものであり、宅地建物取引士と一緒に書面を確認しながら実施します。
これまでは対面でおこなわなくてはなりませんでしたが、IT重説の本格運用が開始されたことにより、従来の重説もしくはIT重説のどちらかを選べるようになりました。
ただし、不動産会社によっては導入されていないこともあります。

IT重説の要件

IT重説は、すべての賃貸借契約で利用できるわけではありません。
国土交通省が作成した「ITを活用した重要事項説明実施マニュアル」では、IT重説の要件として次の4つを挙げています。

●双方向でやりとりできるIT環境において実施する
●重要事項説明書などの必要書類を事前に送付する
●説明の開始前に契約者の重要事項説明書などの準備状況とIT環境を確認する
●宅地建物取引士証を契約者が視認できたことを画面上で確認する


IT重説を希望する場合は、これらの要件を満たす環境がなくてはなりません。

IT重説の流れとやり方

IT重説の流れとやり方

2017年10月に本格運用が開始されたIT重説は、コロナ禍などもあり、利用する方が増えています。
国土交通省に調査によると、運用開始から3年後の2020年10月の時点で、10万件以上の賃貸借契約でIT重説が実施されたそうです。
2022年4月時点、賃貸借契約でIT重説を実施している不動産会社の割合は、全国では13%、東京都では20%超にまで増加しています。
同調査では「IT重説は活用が進んでいる」と報告されているため、これから賃貸物件を契約する方はIT重説を選択できる可能性が十分にあるでしょう。

IT重説の流れ

実際にIT重説を選択した場合は、次の流れで実施されます。

●重要事項説明書を受け取る
●日時を調整する
●端末を用意し、通信状況を確認する
●IT重説を受ける
●書類を返送する


これまで重要事項説明書は紙での交付が必要でしたが、2022年5月に電子書面が認められました。
そのため、書面の交付から返送まで、IT重説の流れのすべてをオンラインで完結することが可能です。

IT重説のやり方

IT重説の流れに沿って、各過程のやり方を解説します。
重要事項説明書を受け取る
郵送もしくはメールなどで重要事項説明書を受け取ります。
重説は、重要事項説明書が手元になくてはおこなえません。
郵送を希望する場合は、しっかりと受け取り、なくさないように気を付けてください。
IT重説の際には紙もしくは電子の重要事項説明書を見ながら、宅地建物取引士が口頭で説明します。
重説の内容は多岐にわたるため、予習をせずに当日を迎えると、細部まできちんと理解できないかもしれません。
手元に重要事項説明書が届いたら、当日までに目を通し、疑問点を洗い出すことが大切です。
日時を調整する
不動産会社と相談し、IT重説の日時を決めます。
重説は宅地建物取引士の有資格者でなくてはおこなえないため、希望の日時を選べない可能性もゼロではありません。
希望の日時がある場合は、早めに予約をすると良いでしょう。
端末を用意し、通信状況を確認する
IT重説で使用できる端末は、テレビ通話機能の付いている、パソコン・スマートフォン・タブレットなどです。
事前に専用のアプリのダウンロードが必要な不動産会社もあります。
端末を用意したうえで、当日までに設定や通信状況などを確認しましょう。
IT重説を受ける
不動産会社とオンラインでつながったら、案内どおりに画面や音声をチェックしてください。
通信状況に問題がない場合は、IT重説が始まります。
説明前には、IT重説をおこなう宅地建物取引士が宅地建物取引士証を提示することが義務付けられています。
契約者も本人確認書類の提示が必要です。
書類を返送する
IT重説の内容に問題がなければ、重要事項説明書に署名・捺印をして返送しましょう。
紙の書類は郵便で送り返し、電子書面は電子サインをして返信します。
書類を返送したら、IT重説は完了です。

IT重説の注意点

IT重説の注意点

IT重説のメリットは、「店舗までの移動にかかる時間や費用を省ける」「店舗に行けない方でも契約できる」「自宅でリラックスした状態で説明を受けられる」などです。
メリットの多いIT重説ですが、実際に受けた方からはデメリットを指摘する声も上がっています。
デメリットやトラブルを回避しつつ、スムーズにIT重説を受けるために、注意点を確認しておきましょう。

注意点①録画に同意するかどうか決めておく

従来の重説では、説明中のやり取りを記録に残すことは容易ではありませんでした。
しかし、IT重説であれば、録音・録画によって重説中の様子を記録できます。
これにより、いった・いわないのトラブルを回避できる点が、IT重説のメリットのひとつです。
ただし、録音・録画は義務付けられているわけではありません。
IT重説では契約者の個人情報に触れる場面もあるため、抵抗を感じる方もいることでしょう。
録音・録画をするメリットと天秤にかけて、同意するか、拒否するか、ご自身の方針を決定することをおすすめします。

注意点②カメラ・マイクはONにする

IT重説の録音・録画は任意ですが、重説中のカメラ・マイクは双方がONにしなくてはなりません。
「人に会うのが恥ずかしい」「顔を見られたくない」と思う方もいるかもしれませんが、しっかりとお互いを確認しながら重説を受けましょう。
自宅の様子を見られたくない方や、端末のテレビ通話対応状況が不明な方は、従来の重説を選ぶほうが安心です。

注意点③できる限り内覧をおこなう

IT重説の運用が開始され、さらに書面の電子化も認められたため、お部屋探しから契約までをオンラインで完結させる方が増えてきました。
オンラインで完結させると時間や費用を削減できますが、あまりおすすめはできません。
実物を見なくてはわからないこともあるため、実物を見ずに契約を進めると、入居してから「想像していたものと違う」と後悔するおそれがあります。
できる限り内覧をおこない、実物を確認してからIT重説に進むことをおすすめします。

まとめ

IT重説とは、オンラインでおこなう重要事項説明(重説)のことです。
パソコンなどのテレビ通話機能を利用し、宅地建物取引士から不動産や契約内容に関する説明を受けます。
IT重説の普及により、オンラインで賃貸借契約を完結できるようになりましたが、実際の様子を知るためにも、できる限り内覧をおこなうことをおすすめします。


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