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契約更新にともなう家賃の値上げは拒否できる?上手な交渉のポイントを解説

契約更新

関口 静男

筆者 関口 静男

不動産キャリア12年

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契約更新ともなう家賃の値上げは拒否できる?上手な交渉のポイントを解説

賃貸物件を契約する際に、家賃を重視した方は多いのではないでしょうか。
家賃は契約中一定ではなく、大家さんから値上げが打診されることがあり、とくに契約更新時に値上げのタイミングが多いです。
そこで今回は、賃貸物件の契約更新のタイミングを控えている方に向けて、契約更新にともなう家賃の値上げについて解説します。

契約更新にともなう家賃の値上げは拒否できる?

契約更新にともなう家賃の値上げは拒否できる?

賃貸物件を借りると、基本的には数年おきに契約更新のタイミングが訪れます。
契約更新時には更新料がかかることがあるため、更新料の有無や金額を気にする方は少なくありません。
しかし契約更新時には、もう1つ金銭的な負担が生じるおそれがあります。
それは、契約更新にともなう家賃の値上げです。
契約更新の時期が近づくと、「これまで5万円だった家賃を、更新後は6万円にしたい」といった通知が届くことがあります。
ただし、契約更新時にかならず値上げされるというわけではありません。
また値上げのタイミングは契約更新時に限られるわけではなく、入居中に突然値上げを打診されるケースも見られます。
どのようなタイミングであっても、法律上、家賃の値上げは大家さんに正当な理由がある場合にしか認められません。
大家さん側の理由については、のちほど解説します。

家賃の値上げは拒否できる?

突然であっても、契約更新時であっても、家賃の値上げを拒否することは可能です。
家賃を値上げするということは契約内容を変更するということであり、お互いの合意がなくては実現しません。
しかし一方的に拒否を示し、音信不通の状態にしてしまうと、退去を求められる可能性があるため注意が必要です。
また契約更新のタイミングで値上げを告げられた場合は、すぐに書類にサインをしないようにしましょう。
契約更新の時期が近づくと、大家さんや管理会社から更新用の書類が届きます。
更新に合意する場合は、届いた書類に署名・捺印し、返送する仕組みです。
契約更新にともない値上げがおこなわれる場合、安易に書類を返送してしまうと、値上げに同意したと見なされるおそれがあります。
現在の賃貸物件に住み続けたいケースでは、焦って更新の書類を返送してしまいがちです。
値上げを拒否したい場合は書類にサインをせず、まずは大家さんや管理会社に連絡をとって事情を確認しましょう。

契約更新時に家賃が値上げされる理由とは?

契約更新時に家賃が値上げされる理由とは?

家賃の値上げは突然告げられることもありますが、値上げのタイミングとして多いのは契約更新時です。
家賃の値上げについては、多くの大家さんが「言い出しづらい」と感じています。
しかし契約更新はこれまでの契約を見直す機会であるため、契約更新時なら言い出しやすいと大家さんも考えるのです。
また、家賃の値上げは「もっとお金がほしいから」という理由でおこなうものでもありません。
家賃の値上げ自体は借地借家法第32条で認められていますが、「正当な理由が必要」である旨も記載されており、みだりにおこなえないようになっています。
借地借家法で挙げられている「正当な理由」の具体的例は、次のとおりです。

理由①大家さんの金銭的な負担が重くなった

固定資産税などの負担が重くなり、その支払いのためにやむを得ず家賃を値上げするケースです。
借地借家法第32条では「土地もしくは建物に対する租税その他の負担の増減」「土地もしくは建物の価格の上昇もしくは低下その他の経済事情の変動」と表現されています。
土地や建物の所有者は、固定資産税などの税金を納めなくてはなりません。
固定資産税は土地や建物の評価額によって算出されますが、評価額は3年に1度見直されます。
周辺地域の開発が進んだなどの理由で土地や建物の評価額が上がると、納めるべき固定資産税の額も増えます。
固定資産税の額は不動産の状況やエリアにより異なりますが、大きな金額となることが一般的です。
固定資産税が増えると大家さんは金銭的に苦しくなり、家賃の値上げを検討するようになります。
税金だけでなく、物価の変動などの理由により、土地や建物に関する大家さんの金銭的な負担が重くなった場合も同様です。

理由②類似物件と比べて家賃が安すぎる

家賃設定から長い時間が経過したなどで、類似物件に比べて家賃が著しく安くなってしまったケースです。
借地借家法では「近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったとき」と表現されています。
物価が変動するように、家賃の相場も変動します。
同じ入居者が同じ部屋で長年暮らしているケースなどでは、大家さん側も値上げのタイミングを見失いがちです。
そのまま数十年が経過すると、近隣にある類似物件の相場のバランスを崩すような家賃となってしまいます。
そのため「次の契約更新のタイミングこそは値上げをしよう」と一念発起する大家さんも少なくありません。

契約更新にともなう家賃の値上げは交渉できる?ポイントを解説

契約更新にともなう家賃の値上げは交渉できる?ポイントを解説

最初の章でお伝えしたとおり、家賃の値上げを拒否することは可能です。
しかし頑なに拒否してしまうと、退去を勧められるおそれもあります。
また家賃の値上げ自体には納得できるものの、金額に同意しかねることもあるでしょう。
このようなケースでは、大家さん側と交渉をすることをおすすめします。
上手な交渉のポイントは、次のとおりです。

ポイント①根拠となる資料を見せてもらう

家賃の値上げには、正当な理由がなくてはなりません。
そのため、なぜ家賃の交渉が必要なのか理由を聞き、根拠となる資料を見せてもらうようにしましょう。
固定資産税の負担の増加が値上げの理由となるケースでは、数年分の固定資産評価証明書や納税通知書を見せてもらうと、事実確認が可能です。
値上げの理由が正当な理由に該当しない場合は、その旨を指摘することもできます。

ポイント②感情的にならない

値上げの理由が正当だとは思われないケースや、根拠となる資料に納得できないケース、また値上げ自体を不快に感じるケースでも、感情的になってはいけません。
相手の態度はこちらの態度の鏡となりやすく、こちらが感情的になると、大家さんも感情的になる可能性があります。
本来ならば交渉の余地があったケースだとしても、けんか別れに終わってしまうかもしれません。
金銭的な交渉は利害関係がからむため感情的になりやすい場面ですが、落ち着いた態度で交渉に臨むことが大切です。

ポイント③長く暮らしたいと伝える

今後もその賃貸物件で暮らしたい場合は、感情的にならず、柔らかい態度で交渉に臨む必要があります。
そのうえで、今後も長く住み続けたいと伝えるようにしましょう。
大家さんが賃貸物件を経営するうえで大きな問題となるのが、空室リスクです。
いったん空室が生じると、入居者募集の営業や各種手続き、清掃などの手間や費用がかかってしまい、大家さんにとって大きな負担となります。
家賃を値上げしてすぐに退去されるより、現在の家賃で長く住んでもらったほうが得だと考える方も少なくありません。

ポイント④選択肢を多く持つ

値上げに応じる・拒否するの二極で考えないことも大切です。
「長く暮らすから値上げ幅を抑えてほしい」「現在は金銭的に苦しいため来年であれば値上げに応じる」「値上げには応じるが更新料を減額してほしい」など、選択肢を多くもって交渉するようにしましょう。
値上げは簡単におこなえるものではなく、大家さんにとっても苦渋の決断であることが少なくありません。
長く暮らしたいと伝えると、これらの要望がとおりやすくなります。

まとめ

賃貸物件の契約更新時は、家賃が値上げされやすいタイミングです。
しかし一方的に値上げされることはなく、正当な理由と入居者の同意がなくてはおこなえません。
家賃の値上げに納得できない場合は、事情を確認したうえで、ポイントを押さえて交渉しましょう。