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電子契約とは?賃貸借契約を電子契約でおこなうメリットとデメリットも解説

賃貸物件の契約について

関口 静男

筆者 関口 静男

不動産キャリア12年

夜遅い時間帯に対応できる不動産会社は少数派です。
常に応答できるわけではありませんが、弊社は執務しているスタッフが居る場合もございますので、まずは夜分でもご遠慮なくお電話下さい。

電子契約とは?賃貸借契約を電子契約でおこなうメリットとデメリットも解説

国がデジタル庁を設置するなどデジタル化を推進しているのに伴い、私たちの日常においても電子化が取り入れられるようになっています。
電子化の1つの取り組みに電子契約があり、賃貸借契約も電子契約が可能になりました。
そこで今回は、電子契約とは何かのほか、賃貸借契約を電子契約でおこなう際のメリットとデメリットも解説するので、賃貸借契約を予定している方はお役立てください。

電子契約とは

電子契約とは

日本では、2021年5月にデジタル改革関連法が成立し、電子化の流れが進んでいます。
現在は確定申告や各種の手続きにおいて電子化が取り入れられており、不動産業界においても電子化による影響が発生しています。

電子契約とは

電子契約とは、パソコンやスマートフォン、タブレットなどの電子機器を使用し、オンライン上の電子署名により契約する方法です。
電子署名を施した電子データには、印鑑証明書の代わりとなる電子証明書のほか、契約日時やタイムスタンプを刻印し文書を改ざんしていない点を証明します。
なお、電子データは、企業内のサーバーやオンラインストレージなどで保管されます。

賃貸借契約書

賃貸物件を貸借するときには、物件の内容や賃貸条件について貸借人双方の合意のうえで賃貸借契約書を結ぶのが一般的です。
不動産取引においては、宅地建物取引業法に基づき賃貸借契約書と重要事項説明書を書面であらわさなければなりませんでした。
重要事項説明書とは、家賃などの賃貸条件や建物の状況などについて売主が買主に対し説明する書類で、仲介を依頼したときには不動産会社が作成するケースが多くを占めます。

不動産業界における電子化の流れ

デジタル改革関連法の成立に基づく法改正においては、不動産取引における書類の電子化は規定されていませんでした。
その後、2021年9月1日に、国や地方行政のIT化やデジタルトランスフォーメーションの推進を目的としてデジタル庁が設置されてから動きが加速しました。
国土交通省では、翌年4月27日にIT重説と呼ばれる重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明実施マニュアルを公表しています。
同年5月には宅地建物取引業法が一部改正され、同法に基づき書面の作成が義務付けられていた賃貸借契約書と重要事項説明書の電子化が可能になりました。
なお、媒介・代理契約書や指定流通機構に登録する際の書面についても、相手方の承諾を条件として、電子ファイルでの交付が認められています。

電子契約における注意点

賃貸借契約書と重要事項説明書の電子化が可能になっていますが、紙媒体で契約できないわけではありません。
賃貸借契約を電子契約で結ぶときには、入居者となる賃借人から電子契約の利用について同意のうえで承諾を得る必要があります。
この点は、電子化を望まない消費者の保護などを目的として、宅地建物取引業法において規定されており注意が必要です。

賃貸借契約を電子契約でおこなうメリット

賃貸借契約を電子契約でおこなうメリット

国がデジタル改革関連法を成立したとおりデジタル化や電子化には利点があります。
賃貸借契約を電子契約する際においても、さまざまなメリットがあります。

不動産会社におけるメリット

不動産会社にとって、業務を効率化できるのが大きなメリットです。
紙媒体で契約書を締結するときには、契約書の作成とともに書類の不備をチェックする必要があります。
契約書のなかで署名捺印する箇所を理解してもらうよう鉛筆や付箋で説明を記すほか、封筒に入れて発送するなど、契約締結までに手間と時間がかかります。
返送されてきた書類に不備があると説明を伏して再びやり取りが必要になり、契約の締結が予定日よりも遅れるケースは少なくありません。
電子契約ができると一連のやり取りをオンライン上でおこなえ、作業工程が大幅に短縮されるだけではなく、契約までのスピードアップにも効果が見込めます。
郵送すると双方の手元に契約書が届くまで数日間のタイムラグが発生するのに対し、オンラインは瞬時で済み、契約日など日程調整の選択肢を広げられるでしょう。
また、紙媒体のときには紙代のほか印刷代や封筒代、郵送費などがかかりますが、ペーパレス化に伴って、これらの費用を削減できます。
なお、土地の賃貸借契約の場合には契約書に収入印紙が必要になりますが、電子契約のときには印紙が不要な点もメリットの1つです。

賃借人におけるメリット

手間と時間を省ける点は、賃借人にとってもメリットといえます。
とくに遠方の物件のときには移動時間と費用の負担が大きく、移動する回数を少なくできると、それだけ負担を軽減できます。
不動産会社では賃貸借契約に限らずオンライン内見やIT重説にも対応しており、内見や重要事項説明、契約をオンラインで済ますと大きな効果を見込めるでしょう。
内見や重要事項説明の際には、Web会議アプリなどのビデオ通話ツールなどを利用して対応しています。
契約書や重要事項説明の内容確認をおこなう必要はありますが、紙媒体のときに必要な記名や捺印、郵送などの手間は発生しません。
書類のやりとりが不要で、仕事の引き継ぎや引っ越しの準備など忙しいときに時間を確保するうえで助かるでしょう。
出先にいてもタブレットなどで対応できる点でも、自身の都合に合わせやすくなります。
また、契約に関する一切の書類を電子化により保存できる点もメリットにあげられ、書棚など物理的なスペースを確保しなくて済みます。
そのうえ、契約内容などを確認したいときに必要な書類を閲覧しやすく、紛失する心配もありません。

賃貸借契約を電子契約でおこなうデメリット

賃貸借契約を電子契約でおこなうデメリット

電子契約には、さまざまなメリットがある反面デメリットもあり、取扱いには注意しなければなりません。

インターネット環境の普及

賃貸借契約を電子契約でおこなうには、インターネット環境が必要です。
インターネット回線がないときには書類の送受信が難しく、音声や映像が安定しない環境ではIT重説が困難になってしまいます。
ほとんどの不動産会社はインターネット環境を整えていますが、借主だけではなく貸主のなかにもインターネットの環境にないケースや操作が不慣れな方がいるのが実情です。
子どもの頃からスマートフォンやパソコンなどのデジタルに慣れている若者世代には、オンラインでのやり取りに対する抵抗感は発生しないかもしれません。
しかし、さまざまな手続きがデジタル化され、デジタル端末や電子契約ツールの操作方法が普及しているとしても、年配の方などに浸透しているとはいえないでしょう。
パソコンの操作などに慣れていない方にとっては、電子化への対応が大きなストレスになる可能性もあります。
賃貸借契約をおこなうときには紙媒体の取扱いも可能であり、電子契約を求められても断るのが得策です。
自信が持てないときには、恥ずかしがらずに拒んでくださって構いません。

紙媒体の優位点

紙媒体の本と電子書籍を比較するときに意見が多いのが読みにくさであり、電子メディアの欠点です。
契約書などの全体像を把握しにくい点や、情報を画面にすると文字が小さくなるなど指摘されています。
国土交通省がおこなった社会実験のアンケートにおいても、電子化によるデメリットを感じなかった方は38%ほどにとどまっています。
今後、技術開発やPDFファイルへの慣れなどにより問題を克服できるかもしれませんが、現時点において紙媒体にも優位な点があるのは紛れもない事実です。

まとめ

電子契約が普及しており、賃貸借契約においても勧めるのが一般的になっています。
ただし、書面による契約を希望するときには、従来どおりの契約方式で取り扱えます。
不安に感じた場合には、遠慮なく、紙媒体での契約をお申し出ください。


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